人間関係リセット癖とは?38%が経験ありという2026年の調査や見捨てられ不安などの心理、全部切る前にできる5つの対処法と相談先

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仲良くなってきた友だちや職場の人との連絡を、ある日ぷつりと絶ってしまう。LINEのトークを消し、SNSのフォローを外し、転職や引っ越しを機に誰にも新しい連絡先を伝えない。そんな「人間関係リセット癖」に心当たりがあって、「またやってしまった」と自分を責めている人もいるのではないでしょうか。

X(旧Twitter)でも、「人間関係リセット癖が年々強化されていく」(Xの投稿)「常に薄ら人間関係リセット癖あるのやめたい」(Xの投稿)といった投稿があります。この記事では、リセット癖とはどういうものか、なぜ起きるのか、そして関係を全部切ってしまう前にできることを順に紹介します。

目次

人間関係リセット癖とは?

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まずは、「人間関係リセット癖」や「人間関係リセット症候群」という言葉が何を指しているのかを確認しておきましょう。あわせて、実際にリセットした経験のある人がどのくらいいるのかも、調査の数字で見ていきます。

正式な病名ではなく、ネットから広がった言葉

「人間関係リセット症候群」は、名前に「症候群」とついていますが、医学的な病名ではありません。臨床心理士・公認心理師の南舞さんは、ヨガジャーナルオンラインの記事で、これはあくまで心理状態を表す言葉なので正式な医学用語ではなく、診断を受けることもないと説明しています。明確な基準もないそうです。

言葉の始まりについては、コミュニケーション教室を開いている公認心理師の川島達史さんが、自身のサイト「ダイコミュ」で、2014年ごろにGoogleで検索され始めた言葉だと書いていました。川島さんによると、心理学の世界ではこの言葉を扱った論文はまだなく、一般の人が作った言葉がSNSで広まって定着したものと思われるそうです。早稲田大学文学学術院教授で、孤独・孤立と人間関係を研究している石田光規さんも、講談社の子育てメディア「コクリコ」で、2010年代半ばごろからこの言葉を耳にするようになったと述べています。人材育成会社アチーブメントHRソリューションズのコラムは「2016年前後から」としていて、時期の言い方は少しずつ違いますが、ここ10年ほどで広まった言葉だという点は共通していました。同じコラムでは、日曜の夕方に翌日の出社が憂うつになる「サザエさん症候群」などと並ぶ、精神面の「現代病」のひとつと言われている、とも紹介されています。

では、どんな行動がリセットと呼ばれているのでしょうか。各記事で挙げられていた例をまとめると、次のようなものです。

  • SNSのアカウントを突然削除する、フォローを一斉に外す
  • 親しかった相手と突然音信不通になる
  • 電話帳の連絡先を大量に消す
  • 連絡先が変わっても相手に知らせない
  • 人間関係がうまくいかないことを理由に転職や引っ越しを繰り返す

石田さんは、これまでも高校入学や引っ越しなどの節目で人間関係を一変させる人はいたが、それは節目を利用した現状変更の試みのようなものだった、と書いています。一方で「人間関係リセット症候群」には、テレビゲームをリセットするように自ら関係を切断する冷たさがある、というのが石田さんの見方です。この記事では、こうした行動を繰り返してしまう傾向を「リセット癖」と呼んで話を進めます。

調査では38%が「リセットしたことがある」

リセットは、ごく一部の人だけがしていることなのでしょうか。マーケティング・リサーチ会社のクロス・マーケティングが2026年1月に全国の20〜79歳の男女2,400人に行った「人間関係に関する調査(2026年)」では、「自ら長期的に連絡を絶つこと」を人間関係リセットとして質問しています。その結果、過去に人間関係をリセットした経験がある人は38%、今後リセットしたい相手がいる人は24%でした。どちらも2025年の結果と差はなく、女性のほうが割合は高かったそうです。リセット意向が最も低かったのは70代の14%でした。

リセットした相手は「友人・知人」が56%で最も多く、次いで「職場の人」「同級生・学生時代の先輩・後輩」が2割台です。きっかけとして、友人・知人では「面倒/うっとうしい/疲れる」「性格や価値観、考え方が合わない」、職場では「面倒になった/ストレスを感じた」「いじめ/いやがらせにあった」という声が紹介されていました。方法は「電話帳の連絡先を消す」「一時的に音信不通になる」が上位2つで、20代ではLINEを含むSNSでのリセットが極めて高いそうです。

同じ会社の2024年1月の調査(同じく2,400人)では、リセット経験者は41%で、とくに女性と50代は46%と高めでした。また、関西テレビの報道番組が2023年にLINEで視聴者に聞いたアンケートでは、「人間関係をリセットしたいと思ったことはありますか?」に136人中71%が「はい」と答えたそうです。こちらは番組の視聴者に聞いたもので、全国の縮図ではありませんが、リセットしたいという気持ちを持つ人が少なくないことはうかがえます。

番組に出演した大阪経済大学の田中健吾教授は、SNSの利用が多い若者に多いと思われるかもしれないが、40代・50代もSNSをそれなりに使っていて、年代による特徴があまりないのが特徴かもしれない、と話していました。リセットしたくなる気持ちは、特別な人だけのものではないと言えそうです。

なぜ関係をリセットしたくなるの?

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リセットしたくなる理由は人によって違います。専門家の解説では、いくつかの心理的な背景が挙げられていました。自分に近いものがあるか、照らし合わせながら読んでみてください。

「見捨てられる前に離れる」見捨てられ不安

公認心理師の川島さんは、リセット癖のある人に典型的にみられるものとして「見捨てられ不安」を挙げています。見捨てられ不安とは、仲良くなった人がいつかは自分から離れてしまう、見捨てられるのではないか、という不安のことです。川島さんは、井梅らが2006年に成人1,041人を対象に行った、青年の人間関係に関する心理尺度の研究を紹介しています。相手と深い関係になりたいと思う「一体希求」があるのに、仲良くなれていないという感覚「親和不全」を持ちやすい、という結果です。

川島さんがあげている例はこうです。付き合って間もない大好きな相手に、デートのあとLINEを送ったのに1日返信が来なかったとします。「もっとやり取りしたい」という気持ちと、「どうして返事が来ないんだ」「この人も私を裏切るのか」という気持ちがぐるぐる回り、こんなに苦しむくらいならいっそ縁を切ったほうがよい、という気持ちになってしまう。見捨てられ不安のある人は、親しくなるほど苦しくなるので、その苦しみから人間関係をリセットしたくなるのだそうです。

ダイヤモンド・オンラインに掲載された、精神科医の著書『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の連載記事にも、似た事例が紹介されていました。記事に登場する相談者は、中学から今の職場まで7回以上もリセットを繰り返していたそうです。振り返ってみると、「会いたくない」と感じ始めるのは、卒業や部署異動そのものの日ではなく、合格が決まったときや異動が通達されたときでした。「この人たちと離れなければいけない」と感じたときに恐れが生じ、自分が傷つくくらいなら自分から関係を断ったほうがましだと思ってしまう。記事では、リセットのクセが「自分の心を守るため」に働いていたとまとめられています。

個人の意見ではありますが、専門家の解説と同じ方向の見方です。川島さんは、見捨てられ不安には過去の親子関係などが影響していることもあり、心を整理するには時間がかかりやすいとしています。対策として、見捨てられ不安がある自分に気づく、すぐに結論を出さない、冷静になる力をつける、やわらかく主張する練習をする、といったことを長期的に続けていくよう勧めていました。

白黒つかない関係や本音の話し合いが苦手

2つ目の背景として川島さんが挙げているのが、「曖昧さ耐性」の低さです。中途半端な状況だと不安になる、白黒つかない状態に耐えられない、好きか嫌いかわからないと混乱する、といった心理状態を指します。川島さんは、友野が2018年に学生300人を対象に行った曖昧さ耐性と精神的健康の調査を紹介し、曖昧な状況が嫌な人は、曖昧な状況でもよしとしようと割り切るのが苦手な傾向がある、と説明していました。関係がぼんやりしている友人について「中途半端な人間関係は時間の無駄」と考え続け、縁を切ってスッキリしたくなってしまうわけです。

3つ目は、本音で話し合えないことです。川島さんは、松永らが2008年に学生228人を対象に行った友人関係の調査を引き、本音で話すグループはうわべで話すグループより、関係を調整する力が高く、相手を信頼している傾向があったと紹介しています。「どうせ話し合っても無駄だ」「主張しても相手の意見は変わらない」と感じる人は、話し合いを避けて自分から身を引き、リセット癖がつきやすいそうです。

臨床心理士の南さんも、同じような点を指摘しています。南さんが注目しているのは、心理学者の益子洋人さんが提唱する「統合的葛藤解決スキル」です。これは、日常の対人関係でぶつかったときに、どちらか一方ではなく双方が納得できる着地点を見つけるスキルのことだそうです。もうひとつ、心理学者の河合隼雄さんが大切さを説いた「葛藤保持力」、つまり悩みや迷いを抱えたまま、「Aという見方もあるが、Bという見方もあるかもしれない」と考え続けられる力も紹介していました。南さんは、人間関係をリセットしたくなる人たちは、こうしたスキルが苦手なのだろうと書いています。

さらに川島さんは、感情のコントロールが苦手なことも挙げていました。カッとなったときに「もうあんたとは話さない!」とその場でリセット宣言をしてしまうタイプです。逆に言えば、見捨てられ不安や曖昧さへの苦手意識があっても、感情を落ち着かせる手段を持っている人は、リセット癖を抑えられるそうです。具体的な方法は、後の章で紹介します。

自分のキャパを超えたつながりで疲れてしまう

関西テレビの番組で、田中教授は、リセットしたくなりやすいタイプとして「感受性が豊かな人」と「コミュニケーションが苦手な人」を挙げていました。感受性が高い人は、きれいなものを受け止める力が強い一方で、外からのストレスや悪い刺激も同じように受け止めやすく、ストレスにもろいところがあるそうです。

田中教授が強調していたのは、つながりの「量」です。スマホやSNSによって、自分が直接行動できる範囲を超えて人とつながってしまうことが多くなりました。番組によると、大学生に聞くとLINEの友だち数は平均187人で、約1割は300人を超えているそうです。けれども、人がコミュニケーションでやり取りできるキャパシティには限界があります。限界を超えたつながりができてしまうと、耐えられなくなって「関係を清算したい」という考えに陥ることがある、と田中教授は説明していました。

人材育成会社のアチーブメントHRソリューションズのコラムでは、リセットの原因として、周りからの期待や評価に応えようとして自分を追い込みすぎること、上司と部下の板挟みなどで気を遣うことに疲れること、嫌われている・避けられている気がすることなどが挙げられています。完璧主義の人や頼まれたら断れない人、八方美人になってしまう人は、ストレスが限界を超えたタイミングで突然連絡を絶ってしまうことがあるそうです。また、睡眠不足や運動不足、飲酒の量が多いといった生活習慣の乱れで疲れがたまると、人間関係もおっくうになりやすいとも書かれていました。

石田教授は、リセットという行為が「とにかく友だちといたい」と「友だちなんかいらない」という両極端な考え方にとても近い、と指摘しています。「とにかく友だちといたい」と無理をした結果くたびれてしまい、「友だちなんかいらない」とリセットする。こうしたことを繰り返しても、中身を隠さなくてよい友だちはなかなかできないだろう、というのが石田教授の見方でした。無理をして関係を広げすぎていないか、一度ふり返ってみるのもよさそうです。

リセットするのは悪いこと?

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ここまで読んで、「リセットはいけないことなのか」と不安になった人もいるかもしれません。専門家の意見を見ると、リセットそのものを一律に否定しているわけではありませんでした。

「良いリセット」と「悪いリセット」がある

田中教授は、関西テレビの番組で「SNSなど連絡先のリセットは悪くはないが、良いリセットと悪いリセットがある」と話していました。良いリセットは、人間関係を整理し、精神状態を元に戻すもの。悪いリセットは、孤立したり、周囲に迷惑をかけたりするものだそうです。

その差について田中教授は、周りに迷惑をかけるか、心配をさせるかどうかが大きいと説明しています。突然いなくなると、周りはどうしても心配し、急に仕事を辞めて連絡がつかなくなれば「命の危険があるのでは」と考えてしまう人もいます。仕事を放り出して迷惑をかけたり、周りを心配させたりしないリセットなら、ある意味では良いリセットかもしれない、というのが田中教授の考えでした。また、仕事を辞めるような重大な決定を、冷静なときならためらうはずなのに、何も考えられなくなって全部なしにしてしまうのは、心理的にかなり悪い状態になっているサインだとも話しています。

公認心理師の川島さんも、リセットにはメリットがある場合もあると書いています。DVを受けている、暴言を吐かれている、いじめにあっている、といった自分にとって明らかにマイナスの関係を思い切って断つことは、人生には必要だというのです。クロス・マーケティングの調査でも、職場の人をリセットしたきっかけに「いじめ/いやがらせにあった」という声がありました。関西テレビのアンケートでも、リセットしたいと思った理由として「知人が自分の陰口を言っていたと聞いたから」「ブラック企業を辞めたから」という声が紹介されていました。自分を傷つける相手や環境から離れることまで「リセット癖」と責める必要はないでしょう。

田中教授は、視聴者からの「人間関係をリセットしたいのは病気ですか?」という質問に対して、ネットで話題になっている言葉のひとつで、病気のような重いものを指しているわけではない、と答えていました。誰でもいっぱいいっぱいになると全部やめにしたいと思うことはあり、それ自体は正常なストレス反応なので、「ストレスが高くなっているぞ」というサインくらいに受け止めるとよい、とのことです。

繰り返すと深い関係が育ちにくくなる

一方で、リセットが「癖」になっている場合は注意が必要だとされています。川島さんは、リセット癖が引き起こす問題として3つを挙げていました。1つ目は、表面的な関係で終わってしまうことです。リセットはある程度関係が深くなったときに起こりやすく、せっかく築いた信頼をゼロに戻してしまうため、深い関係に進みにくくなります。

2つ目は、出会いを雑に扱うようになることです。目の前の人との関係がいずれ終わると感じながら付き合うため、対応が雑になりやすいと川島さんは指摘しています。3つ目は、精神的に疲れることです。出会いと別れを繰り返すたびに、激しい悲しみや焦り、だるさに襲われ、温かく安定した関係がないので悩みを打ち明ける相手も少なく、孤独を感じやすくなるそうです。深刻になると、離縁、離婚、転職、孤独な状況を繰り返すことになる、とも書かれていました。

川島さんは、関係が深くなるとだんだん嫌なところも見えてくるし、けんかもしやすくなると書いています。そのたびに関係を終える癖をつけると、いつも表面的な関係で終わってしまうというわけです。「人間関係で行き違いが出てきたときは、仲良くなった証拠」「本当に仲が良くなるのはそこから」という川島さんの言葉は、リセット癖に悩む人にとってひとつの見方の切り替えになるかもしれません。アチーブメントHRソリューションズのコラムも、リセットで状況が良くなることもあるので必ずしも悪いことではないとしつつ、本人が人間関係を良好に保ちたいと考えているのに定期的にリセットしたくなるのであれば、改善していったほうがよい、と書いていました。

田中教授も、付き合ううちに相手の嫌な点が目につくようになったときの考え方を話していました。嫌な点の近くには、たいていその人の良い面も隠れているそうです。たとえば「口うるさい」と思っていた人が、実はよくしゃべってくれる明るい人だった、というように、相反する面があるといいます。嫌な点が目についたら、その周りに自分の好きな点があるかもしれないと考えてみてはどうか、というのが田中教授の提案でした。

関係を全部切る前にできること

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リセットしたい気持ちが強くなったとき、すぐに行動に移す前にできることがあります。ここでは、専門家が勧めている方法を5つ紹介します。

すぐに決めず、自分の状態を観察する

1つ目は、リセットするかどうかをその場で決めないことです。川島さんは、感情をコントロールする方法として3つを挙げています。「あ、いま感情的になっているな」と自分の状態を観察するメタ認知、いったん深呼吸をしたり肩の力を抜いたりする身体的な対処、そして「すぐに決断をしないようにしよう」「本当にリセットすべきなのか考えてみよう」と考える抑制的な思考の3つが挙げられていました。感情的になったときに冷静になる手段を複数持っておくと、不必要なリセットを防げるそうです。

2つ目は、自分のパターンを数字で振り返ることです。前の章で紹介したダイヤモンド・オンラインの事例では、相談者がまず「人間関係をリセットしない自分になりたい」という目標を言葉にし、次にこれまでの「リセットした回数」を数えました。そのうえで、「いつから会いたくないと感じるようになったか」「そのとき一日のスケジュールに変化はあったか」「お金の使い方や趣味の時間に変化はあったか」「一人でいる時間はどれくらいか」を思い出していったそうです。その結果、「会いたくない」と感じ始めるのが「物理的な移動を意識したとき」に近いことが見えてきた、と書かれていました。

自分のきっかけがわかれば、次に同じ気持ちが出てきたときに「あ、いつものパターンだ」と気づきやすくなります。ノートに「リセットしたくなった日」「そのとき何があったか」「どんな気持ちだったか」を書き留めておくのも、ひとつの方法でしょう。アチーブメントHRソリューションズのコラムでも、改善の方法として、悩みを書き出すことや、睡眠・運動で心身を整えることが挙げられていました。

リセットしたくなる気持ちが出てきたら、少なくとも一晩は置いてから考える、と自分の中でルールを決めておくのもよいかもしれません。田中教授が言うように、冷静なときならためらうはずの決定を勢いでしてしまうことが、悪いリセットにつながりやすいからです。

全部切らずに、段階的に距離をとる

3つ目は、「全部切る」か「全部続ける」かの二択にしないことです。田中教授は、嫌な人と自然に距離を置く方法を聞かれて、段階的にステップを踏んで少しずつ距離を置くのがいいのでは、と答えていました。たとえば、LINEの既読や返信のタイミングが早い人は、相手もそれが当たり前だと思ってやり取りを繰り返しています。少しずつ返信を遅くしていけば、遅くても当たり前になり、それが普通になっていくそうです。

石田教授は、つながりを「友だちかどうか」で振り分けるのではなく、まず「つながりのなかに身をおくこと」が大切だと書いています。だれかが友だちかどうかなんて、何年か先にゆっくり考えればよい、というのです。無理をして居合わせた人と友だちになろうとすると肩に力が入ってしまうので、会話や友だちは「プラスアルファ」くらいに考えるとラクになることもある、と石田教授は述べていました。

この考え方にならうと、「今すぐ縁を切る」ではなく「しばらく連絡の頻度を下げる」「グループの会には顔を出すが、個別のやり取りは減らす」といった中間の選択肢が見えてきます。クロス・マーケティングの2026年の調査では、人とのつきあい方について「つきあう人は増やさずに、今の相手を大切にしていきたい」と答えた人が49%で最も多く、「あまり人とつきあいたくない」は20%、「これからも、いろいろな人とつきあっていきたい」は18%でした。つながりの数を絞ること自体は、多くの人が考えている自然な選択だと言えます。同じ調査では、リセットの方法として「電話帳の連絡先を消す」に並んで「一時的に音信不通になる」が上位に入っていました。70代では「はがきでの連絡をやめる」が多かったそうです。完全に縁を切るのではなく、一時的に連絡を控えるという形をとっている人も少なくないことがわかります。

田中教授は、人間関係は基本的にステップの積み重ねなので、キャパを超えてしまう前に、ふだんから自分のできる範囲を把握しておくことが、よいコミュニケーションにつながると話していました。限界まで我慢してから一気に切るのではなく、早めに少しずつ調整するのがポイントです。

脱スマホと「くだらない話」でストレスをためない

4つ目と5つ目は、田中教授が番組で「リセット予防の2つの対策」として挙げていたものです。ひとつは、少しの時間でも脱スマホをすること。電車での通勤時間の数十分だけはスマホをポケットから出さず、周りの景色を見るなど、時間や場所を区切るとよいそうです。スマホをずっと使っていると、自分自身や周りの人の目、「いいね」の数に関心が向いてしまうので、客観的に自分を見直すために周りの景色や人の姿を見ることが役に立つ、と田中教授は説明していました。番組では、SNSにはフォロワー数や「いいね」至上主義の風潮があり、自分のキャパシティを超えた不必要なつながりにストレスを感じてしまう、とも紹介されています。スマホから離れる時間は、そうしたつながりから少し距離をとる時間にもなりそうです。

もうひとつは、友だちと会ってくだらない話をすることです。田中教授によると、ここで大事なのは仕事上の重要な内容ではなく「くだらないこと」を話す点だといいます。「こういうことを言うとどう思うかな」と気にしている時点で損得勘定が入っているので、何の気がねもなく話せる人が自分にどれだけいるかを考えてみることが、まず一番大事だそうです。コロナ禍やリモートワークで一番失われたのは雑談で、オンラインでは必要な情報しかやり取りしなくなるため、そうした時間を意識的に持つことが有効な対策かもしれない、とも話していました。

できれば対面で会うのがよい、というのも田中教授の意見です。電話でも声である程度わかるものの、会えば表情や言葉のニュアンス以外の情報も伝わるからだそうです。

いまの友だちとうまくいかなくても、行ける場所はたくさんある、と石田教授は書いています。ボランティアの多くはつねにメンバーを募集していますし、本が好きな人なら読書会もよく開かれています。いま、つながっている相手だけに目を向けすぎると、ほかのつながりの可能性を見落としてしまうそうです。リセットしたくなったときこそ、関係を「切る」より、小さな場所に「加わる」ほうに目を向けてみてはいかがでしょうか。

つらさが続くときは相談を

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リセットしたい気持ちが強く、ひとりで抱えるのがつらいときは、専門の窓口に話すという方法もあります。最後に、相談先と、専門家の力を借りたほうがよい場合を見ておきましょう。

電話やSNSで話せる公的な相談窓口

厚生労働省は、悩みを抱えている人向けの特設サイト「まもろうよ こころ」で、電話やSNSで話せる相談窓口を紹介しています。たとえば「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556、ナビダイヤル)は、相談対応の曜日・時間が都道府県によって異なると案内されていました。ナビダイヤルなので通話料がかかり、携帯電話の定額プランの無料通信は適用されないそうです。050で始まるIP電話からは接続できないので、その場合は都道府県・政令指定都市の窓口(IP電話対応)の電話番号にかけるよう書かれています。

24時間対応の窓口としては、「よりそいホットライン」(0120-279-338、フリーダイヤル)が紹介されています。ガイダンスで専門的な対応も選べ、外国語にも対応しているそうです。「いのちの電話」(0120-783-556、フリーダイヤル)は毎日16時から21時まで、毎月10日は午前8時から翌日午前8時まで受け付けていると案内されています。このほか、「死にたい」「消えたい」といった気持ちを受け止める「#いのちSOS」(0120-061-338)も、毎日24時間対応の窓口として載っていました。電話が苦手な人向けに、LINEやチャットで相談できる窓口も同じサイトにまとめられていました。

働いている人なら、厚生労働省の働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」も使えます。電話・SNS・メールでの相談窓口のほか、5分でできる「職場のストレスセルフチェック」や「疲労蓄積度セルフチェック」が用意されています。職場の人間関係をリセットしたくなっているときは、まずセルフチェックで自分のストレスの状態を確かめてみるのもよいでしょう。

窓口の電話番号や受付時間は変わることがあるので、実際に利用するときは「まもろうよ こころ」や「こころの耳」のページで最新の情報を確認してください。「こんなことで相談していいのかな」と迷う必要はありません。厚生労働省のサイトでも、悩みや不安を抱えて困っているときには気軽に相談できる場所がある、と呼びかけています。

気分の波が激しいときは専門家に相談を

リセット癖の背景に、心の不調が隠れていることもあります。川島さんは、人間関係をリセットする癖がある人の中には、境界性パーソナリティ障害がある人もいると書いています。気分の波が激しく、良い・悪い、好き・嫌いが激しく入れ替わる特徴があり、「大好きと言った次の日にこき下ろす」「突然連絡を絶つ、無茶な要求をするなどの試し行為」「いつも人間関係でトラブルを抱えている」といった傾向がみられるそうです。川島さんは、境界性パーソナリティ障害のある人は人口の1〜2%いると推測されている、としています。

また、アチーブメントHRソリューションズのコラムでは、相手に避けられるのが怖くて自分から避けてしまう人や、相手を不快にさせるのが不安で人を避けてしまう人は、リセットしやすいと紹介されていました。コラムではそれぞれ「回避依存症」「対人恐怖症」という言葉で紹介されていますが、名前だけで自分に当てはめて判断するのは避けたいところです。こうした傾向が強く、仕事や生活に支障が出ているなら、自分で判断せず、精神科や心療内科、カウンセラーなどの専門家に相談するのが安心です。この記事で紹介した内容は、診断のためのものではありません。

臨床心理士の南さんは、リセットしたくなる原因として、幼少期の経験や周りの大人との関わりで受けた傷の影響、その人自身の性格特性などが考えられるが、ケースバイケースだと書いています。ダイヤモンド・オンラインの事例でも、相談者は小学生のころから親友が他の子と遊ぶのを見て眠れないほどイライラした経験を語っていました。リセット癖は、長い時間をかけてできあがった心の守り方かもしれません。

だからこそ、すぐに直そうと焦らなくても大丈夫です。川島さんも、絡まった糸を1つずつ丁寧にほどいていく根気強さが大切だと書いていました。「またリセットしてしまった」と自分を責めるより、「今回はどんなきっかけだったか」をふり返るところから始めてみてください。

まとめ

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人間関係リセット癖は、正式な病名ではなく、SNSなどから広まった言葉です。クロス・マーケティングの2026年の調査では38%が「自ら長期的に連絡を絶った」経験があると答えていて、珍しいことではありません。専門家の解説では、背景として見捨てられ不安、白黒つかない関係や本音の話し合いへの苦手意識、自分のキャパを超えたつながりによる疲れなどが挙げられていました。

DVやいじめのような関係から離れることは必要なリセットですが、繰り返すと深い関係が育ちにくくなります。リセットしたくなったら、すぐに決めずに自分の状態を観察する、きっかけを振り返る、全部切らずに少しずつ距離をとる、脱スマホの時間をつくる、気がねなく話せる人とくだらない話をする、といったことから試してみてください。つらさが続くときは、「まもろうよ こころ」や「こころの耳」の窓口に話してみるのもひとつの方法です。

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この記事を書いた人

人との距離感や伝え方、日々の関わりを考える編集室です。気持ちや状況の違いを大切にしながら、暮らしに取り入れやすいヒントをまとめます。

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